特に20年ほどのブランクののちに釣りを再開された方には衝撃的だろうと思うのが、このPEラインでしょう。
 私自身、釣りを再開してすぐに買ったリールに抱き合わせで巻かれていたなんとも珍妙なこの釣り糸を果たしてどうしたものかと首をひねったものです。

 まず、裁縫に使う木綿糸のように複数の糸をよって作られている奇妙さ。
 そして、素材に透明感が全くないこと。
 腰がなくフニャフニャしていること。
 どれも私の知っている釣り糸からは対極にありました。

 しかしながら、このPEラインが今では沖釣りでしようするラインの主流となっているのです。
 珍妙ではあっても、慣れて付き合っていかなければいけないわけです。
 とりあえず、PEラインの特徴を見て行きましょう。

 まず、最大の特徴がより糸であることです。
 基本的には4本よりか、8本よりです。
 値段は4本よりの方が8本よりも安価な傾向にあるようですが、私自身は使っていて大きな差は感じません。
(上級者になってくると状況が変わるのかもしれませんが、特段4本よりで困ったこともない状況ですね)
 より糸だけに傷がつくとよられたうちの1本はあっさり切れ、強度もいきなり3/4や7/8に落ちます。
 これが、ナイロンラインやフロロカーボンラインのようなモノフィラメントライン(単一物質で均一に作られたライン)との大きな違いですね。
 このより糸にコーティングをかけて、一本に固めたPEラインも存在していますが主流ではないようです。
 コーティングをかけると当然その分太くなりますから、PEラインの持つ大きな特徴である細さの割に引っ張り強度が高いという性能をスポイルする結果にもなりませんね。

 さて、次にですが先ほど行ってしまいましたが、PEラインはナイロンラインやフロロカーボンラインに比べて同じ太さでは引張強度がずっと高いのです。
 糸が細ければ、風や潮の抵抗を受けづらくなり、それだけ釣りやすくなります。
 特に投げることについてはこのPEラインの登場は非常に大きく、投釣りやルアー釣りの飛距離は飛躍的に伸びました。
 例として、昔の投げ竿にナイロンライン3号を用いて20号(約75g)程度のおもりを30m程度飛ばすことができるかどうかの私でも、9フィート(2.7メートル)程度のルアーロッドにPE0.5号のラインを用いて5号(約19g)程度のおもりを80メートルから100メートル飛ばすことができます。
 竿の性能も非常に大きいですが、まずPEラインだからできる細いラインの効果が非常に大きいのです。
 ちなみに、これくらいの飛距離があると堤防やサーフ(砂浜)からシロギスを狙うことも普通にできます。

 そして、PEラインが他のラインの追随を許さない特性として伸びの少なさがあります。
 この伸びの少なさからくる感度は圧倒的です。
 魚信をキャッチする性能だけでなく、ラインが海藻に触れているか、おもりが岩にあたっているかなどを伝えてくれる能力は釣りに革命をもたらしたとも言えるでしょう。
 ただし、伸びがないことが短所になるケースも有ります。
 竿も仕掛けも魚に対し強めのセッティングをしている場合、魚のアタリをはじいてしまうケースもよく見られるんです。
 この辺りはタックルの総合バランスの話が絡んでくるので、そのうち失敗談を書いてみたいと思います。

 細くて強く伸びがないという特性は沖釣りとは非常に相性がよく、沖釣りに使われるラインはほぼPEラインに独占される状況となっています。

 では欠点は何でしょう?
 ずばり、スレに弱いのです。
 PEライン登場時はスレに強いラインとして登場したというエピソードを聞いたことがありますが、現在はスレに弱いことは定説となっています。
 この弱点を克服するためにより糸のうちの一本をスレに強い材質のものにしたハイブリッドPEラインも登場してきていますが、決定的な解決にはなっていないようです。
 またPEラインのハイブリッド化は、PEラインが本来持っていた強みをスポイルする結果にもなりかねないので、よく考えながら選択する必要があると思います。

 もう一つの欠点は、腰が無いことでしょうか。
 おもりなどでテンションがかかっていれば比類なき感度を与えてくれるPEラインも、テンションが抜けてしまうとはりのなさから感度が極端に落ちてしまいます。
 ちなみに、BREADENのフィールドテスターである芥川さんが最近のアングリングソルト誌(アジング最強攻略3にも収録されていたはず)にて「多少たるんだ程度では言われているほど感度は落ちない」といっておられます。
 基本的には、細かいシェイクでたるみが消えた瞬間にあたっているか感知されているようですが、そんな操作は初心者には難しく、まったくたるんでしまえばやはり感度面では厳しいので、「たるみは禁物」と考えておいたほうがいいでしょう。
 また、腰が無いPEラインは慣れていないと絡みやすく自己トラブルの原因になりやすいという特徴もあります。

 長所とも短所ともいいがたい特徴としては、比重が水より軽いところでしょう。
 1g未満のおもりを用いる仕掛けでは、PEラインの浮力でなかなか沈降していかないくらいです。
 また、ある程度テンションを保っていても水中ではPEラインは浮力若干浮き気味になっているので、竿によるアクションが水中では上方向働いているケースが多く見られるようです。
 また、比重の軽さは風の影響も受けやすくなります。
 重いおもりでテンションがかかっている状況であればよいですが、そうでなければ風に流されやすいというのは短所と呼べるでしょう。

 また、より糸にする関係上か透明化するのが難しいようで、バークレーのファイヤーライン以外では透明なラインをまず見かけないというのも特徴の一つです。

 結び目による強度低下もかなり顕著です。
 このため投げる用途でPEラインを使う場合は、リーダー(先糸)といわれるナイロンラインやフロロカーボンラインを数十センチから数メートルつけます。(リーダーを付けるのは他の意味もありますがここでは省略)
 このリーダーを結ぶというのが、PEラインの敷居を高くしているようです。
 この辺りについても、いずれ語ってみようと思っています。